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2025/07/22

今必要なスキンケアってなんだろう?現代を生きる人々の肌トラブル解消法

#肌トラブル #スキンケア

気候変動や環境の変化、そして数年にわたるマスク生活など、私たちの肌は様々な外的要因の影響を受けています。現代を生きる私たちの肌は、どのようなトラブルに悩まされ、どうケアすれば良いのでしょうか。青山スキンクリニックの冨田理紗子先生に、現代人の肌トラブルの実態と、効果的なケア方法について伺いました。

PROFILE

青山スキンクリニック/院長 冨田理紗子(とみた りさこ)
川崎医科大学卒業後、日本医科大学付属千駄木病院入職。日本医科大学付属千駄木病院精神神経科入局、静和会浅井病院入職を経て青山スキンクリニック勤務に至る。

現代人が抱える多様な肌トラブル

Q:現代人が抱えやすい肌トラブルにはどのようなものがありますか?

A: 最近、特に目立つのはコロナ禍のマスク着用による影響です。長時間マスクを着けることが習慣化した結果、マスク内の湿気や不衛生な環境、摩擦によって肌トラブルが生じています。具体的にはくすみ、シミ、肌荒れ、赤みといった症状が増えていますね。また、今年の冬は例年以上に厳しい寒さでしたので、乾燥による肌荒れを訴える方も多く見られました。さらに、これからの季節は紫外線量が増えてくるため、すでに紫外線トラブルも少しずつ出始めています。

 

Q:そういった肌トラブルの背景には、環境の変化や気候変動などの影響もあるのでしょうか?

A: 間違いなくあると思います。私が子供の頃と比べても、現在は寒暖差がずっと激しくなっていますし、夏の暑さも格段に厳しくなっています。こうした気候変動は、肌だけでなく体全体の健康に影響を及ぼし、結果として肌状態にも表れてくると考えられます。

 

Q:近年、特に増えている肌トラブルの傾向はありますか?

A: くすみやシミに悩む方が増えていると感じます。これには二つの要因があると思います。一つは、以前より美容への意識が高まり、肌の状態に敏感になった点。もう一つは、紫外線強度が実際に強くなっている点です。肌にとって最大の敵は紫外線と乾燥です。この二つの要素が多くの方の肌トラブルに大きく関わっています。
また、最近では若い世代の患者さんも増えていて、SNSなどの普及から早くからメイクを始めることによる肌トラブルも見受けられます。特に気になるのは、若い方でも肝斑などの色素沈着が増えていることです。ファンデーションの使用や頻繁なメイク落としのための洗顔が肌に負担をかけていることも少なくありません。

現代を生きる人々の肌を守るためのケアとは

Q:肌トラブル解消に効果的なケアについて教えてください。内側と外側、両方からのアプローチが必要でしょうか?

A: 肌トラブルの種類によってアプローチは変わりますが、外側からのケアで特に重要なのは基礎化粧品の選択です。紫外線や乾燥などの外的ダメージから肌を守るためには、適切な保湿が不可欠です。
ただし、保湿というと油分だけに目が行きがちですが、それは誤解です。まず水分による保湿をしっかり行い、肌内部の保水力を高めることでバリア機能を活性化させることが重要です。そして次の段階として、油分を含むクリームなどで水分が蒸発しないよう蓋をするという順序が効果的です。

 

Q:その保湿のアプローチはシミやくすみにも効果がありますか?

A: はい、この基本的なケアがすべての肌トラブルの土台になります。どんなに高価な美容液や特殊な成分を使っても、この基本的な保湿ケアが不十分だと効果は限定的です。例えるなら、不安定な土台の上にいくら立派な建物を建てても、すぐに崩れてしまうようなものです。基本をしっかり固めることが、長期的に見て最も効果的なアプローチなのです。 ですので、トラブルが出てからケアをするのではなく、早いうちからスキンケアを始めた方がいいと考えています。

 

Q:食事や栄養面で特に気をつけるべきことはありますか?

A: バランスの良い食事が基本ですが、現代では痩身への意識から食事内容が偏りがちです。タンパク質を過剰摂取する一方で脂質が不足するなど、栄養バランスが崩れているケースが少なくありません。理想的な3食摂取が難しい場合でも、肌に必要な栄養素を意識して摂るよう心がけるといいでしょう。
具体的な栄養素としては、くすみやシミにはビタミンCが効果的です。また肌荒れ、特にニキビには消炎殺菌作用のあるビタミンB群が有効です。これらの栄養素はサプリメントで補うのも一つの方法です。
季節に応じた食材選びもおすすめです。例えば、夏場に吹き出物が気になる時期は、トマトやキュウリなど体を冷やす性質の野菜が肌の調子を整えるのに役立ちます。東洋医学の観点では、その季節に採れる旬の食材には、その時期の体調管理に適した栄養成分が含まれていると考えられているんですよ。
また、腸内環境の整備も重要です。腸はアレルギー反応を含む免疫機能の中心であり、発酵食品の摂取が効果的です。豆乳、納豆、豆腐などの大豆製品や、ヨーグルト、蜂蜜などは善玉菌の増殖を促し、腸内環境を整えます。健康な腸内環境は「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの生成を促し、心の健康にも良い影響を与えます。脳と腸の関係は非常に密接で、睡眠の質にも影響するため、結果として肌の状態にも良い効果をもたらすのです。

スキンケアアイテムの選び方

Q:スキンケア製品の選び方で大切なポイントを教えてください。洗顔料、化粧水、乳液など、それぞれの選び方にコツはありますか?

A: スキンケアアイテム選びで最も大切なのは、他人の評価ではなく自分の肌との相性です。どんなに評判の良い製品でも、自分の肌に合わなければ効果は期待できません。可能な限り実際に使用感を確かめ、テクスチャーや香りも含めて自分が心地よく感じるものを選ぶことを優先しましょう。
アイテム別のポイントとしては、洗顔料は汚れをきちんと落としながらも肌の潤いを奪いすぎない、使用後につっぱり感のないものが理想的です。化粧水は浸透力が高く保水効果の高いもの、そして最後に乳液やクリームで水分の蒸発を防ぐ「蓋」をするという順序で選ぶといいでしょう。

 

Q:特に注目すべき有効成分はありますか?

A: 肌の悩みによって注目すべき成分は変わってきます。例えば、くすみが気になる方はトラネキサム酸を含む製品が効果的ですし、保水力や保湿力を高めたい方はヒアルロン酸配合のものがおすすめです。自分が最も改善したい肌悩みに合わせて成分を選ぶという視点が大切です。

 

Q:スキンケア製品は季節や肌の状態によって使い分けるべきでしょうか?

A: 肌の状態に合わせて使い分けることは非常に大切です。特に肌トラブルが起きている時は、添加物が少なく、シンプルな成分構成の基本的なスキンケア製品に戻すことをお勧めします。自分に合わないと感じる製品を無理に使い続けるのは避けるべきです。

健やかな肌と、これからのためにできること

Q:最後に、スキンケアにおいて大切にしてほしいことについて、冨田先生からメッセージをお願いします。

A: 最も大切なのは「無理をしないこと」です。何でもそうですが、スキンケアに関しても、完璧を求めすぎるとストレスになりますよね。「やらなければ」という強迫観念から多くのケアを詰め込み、結果として続かなかったり、できなかった自分を責めたりする気持ちが、逆に肌に悪影響を与えてしまいます。
大切なのは、自分にできることから、無理なく続けられる方法で取り組むこと。100%の完璧さを求めず、日々コツコツと続けることが長期的には最も効果的なアプローチです。